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      on 12-September-25

  • シェーカーとこれからの暮らし

    18世紀後半、イギリスからアメリカ東部に移住したシェーカー教徒の共同体から、独自の家具が生まれた。信仰に基づく「質素で誠実な暮らし」を反映したデザインは、無駄をそぎ落とし、使いやすさを徹底的に追求したものだった。やがてシェーカー家具と呼ばれるようになったその形は、後のモダンデザインや北欧デザインにも大きな影響を与え、いまもなお世界中で愛され続けている。今回は、そのシェーカーの魅力を、ザ・コンランショップのオリジナル家具「Ann Shaker」とともに紹介していきます。

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    Hancock Shaker Villageに息ずく、簡素の美

     アメリカ・マサチューセッツ州ピッツフィールド近郊に位置するハンコック・シェーカー村は、歴史的な村で、18世紀末から1960年までシェーカー教徒によって実際に運営されていた宗教共同体の跡地である。現在では広大な屋外博物館として一般公開されていて、訪問者はシェーカー教徒の信仰、生活様式、技術、そして文化に直接触れることができる。

     今回、コンランショップ・ジャパンCDOの中原慎一郎とインテリアスタイリスト石井佳苗氏は、その場所を訪れた。

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     この村は1791年に設立され、最盛期には300人以上の信者が住み、3,000エーカー以上(東京ドーム258個分)の土地を耕し、農業や工芸、商業を営んでいた。シェーカー教徒は勤勉と平等、清貧、そして独自の宗教的実践で知られていて、個人財産の放棄、共同生活、そして完全禁欲を重んじていた。

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     ハンコック・シェーカー村の見どころの一つは、円形石造り納屋。この納屋は1826年に建設され、シェーカー教徒が設計・建築した唯一の円形納屋として知られ、その革新的な構造は、効率性と機能性を追求したシェーカー教徒の理念を体現している。

     納屋の内部は三層構造で、上層から干し草を投入し、中央の干し草置き場に集める設計となっている。牛は内側を向いて配置され、餌やりが容易に行えるよう工夫されている。また、車両が納屋内を一方向に進行できるようになっており、作業の安全性と効率性が高められている。円形の構造は家畜の管理や作業効率を高める設計になっていて、現代の建築家にも大きな影響を与えた。

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     現在、敷地内には20以上の歴史的建造物が保存・復元されていて、当時の生活を再現する展示や実演も行われている。訪問者は、伝統的な織物や木工の技術、調理法、農業の実演などを通じて、シェーカーの暮らしを体感することができる。また、村内では季節ごとのイベントやワークショップ、教育プログラムも充実していて、家族連れや歴史愛好家にも人気な場所である。

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     ハンコック・シェーカー村は、単なる歴史展示ではなく、「シンプルさの中にある美しさ」や「共同体の価値観」といった、現代にも通じるメッセージを伝える場所となっている。

     整然と配置された石造りの納屋や木造の住居、機能美にあふれた家具や道具の数々は、効率性と美意識を兼ね備えた生活の知恵を今に伝えているのである。

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     静かで秩序だった景観の中に身を置くと、訪れた人は単に歴史を学ぶだけでなく、シェーカーが追い求めた精神性や生活哲学を自らの暮らしと照らし合わせて考える機会を得られるだろう。ハンコック・シェーカー村は、過去と現代をつなぎ、ライフスタイルを見つめ直すきっかけを与えてくれる特別な場所である。

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     最後に、ハンコック・シェーカーヴィレッジを訪れるのは今回で3度目となった中原に、シェーカーへの思いを尋ねた。

     「何度訪れても新しい発見があり、改めてシェーカーという存在の大きさを感じます。長年、家具やインテリアを仕事としてアメリカを訪ねてきましたが、その歴史の中でもシェーカーは特別な位置を占めています。そこには商業的な量産家具にはない、健全で誠実な道具としての美しさがあり、日本の民藝運動とも重なる深い味わいがあります。

     日本人の家具作家で、シェーカーから影響を受けていない人はいないのではないかと思うほど、その精神は私たちのものづくりの根本に通じています。今の時代にものを生み出すこと、また消費することを考えるとき、シェーカーから学ぶことは少なくありません。質素でありながらも豊かさを失わないその知恵を、生活の中で実践することこそ大切だと強く思います。

     彼らの椅子やキャビネットは、単なるデザインを超え、人間の生き方や美意識にまで踏み込んで語りかけてきます。そしてテレンス・コンランもまた、シェーカーの精神や家具を愛し、自身の本の表紙にシェーカーチェアをあしらったほどでした。私にとっても、シェーカーは自らの暮らしや仕事の根本を見直すきっかけを与えてくれる存在であり、これからも折に触れて向き合い続けたいと思っています。」

    Hancock Shaker Village(ハンコック・シェーカー・ヴィレッジ)

    Hancock Shaker Village
    ハンコック・シェーカー・ヴィレッジ

    1843 West Housatonic Street, Pittsfield, Massachusetts, USA

    Hancock Shaker Villageは1783年に設立されたシェーカー共同体の一つで、1960年からは屋外博物館として公開されており、シェーカーの信仰・生活・建築・工芸を伝える施設となっている。

    Photo By Hiroki Isohata


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